医療観察法.NET

精神障害を持つ当事者の立場から

「医療観察法には一切協力すべきではない」と私が考える理由

七瀬 タロウ(統合失調症当事者)
2007年3月

この、サイトには様々な考え方を持つ人が集まっているようですが、私としては、医療観察法にはいっさい協力すべきではないと考えます。

まず、強制入院施設、指定通院機関を、引き受けても良いと考えている病院経営者達の考えを簡単に私の知る限りで簡単に整理してみましょう。

  1. 医療観察法の矛盾を内部から明らかにしていくために引き受ける。
  2. 地域精神医療と言う観点から、地域で出た対象者は引き受ける。

大体以上の2点に尽きると思いますが、極論すれば、日米安保条約にさんざん反対しておいて、安保条約の矛盾を内部から明らかにするために、基地をすすんで受け入れると言っているようなモノです。無論根強い反対運動にもかかわらず米軍基地を最終的に受け入れたのは、経済的な「見返り」と言う要素が大変大きかったからだと思いますが、すすんで医療観察法の運用に協力しようとする精神科病院は、例えば入院患者180万円以上という経済的見返りがなくてもそれでも赤字覚悟で積極的に「協力」するのでしょうか。

また、強制入院施設、指定通院機関を受け入れると言うことは、司法精神医学の「リスク評価パラダイム」を採用せざるを得ません。そうしないと、強制入院解除、強制通院解除の決定を下したあと、「同様な行為を再び行った」場合に、病院側が責任を問われる仕組みになっているからです。「リスク評価パラダイム」に従って解除の決定を下した場合は、これが現在の最新の科学的再犯予測研究の限界で、病院側には責任はないと主張出来ます。

ようするに、引き受けるのは「対象者」だけではないのです。司法精神医学の体系そのものを、「まるごと」受け入れなければ、運営は不可能なのです。「精神科医は預言者として振舞うことは出来ない」反対運動のパンフレットに書いてあったことですが、引き受ける以上、「疑似」科学に基づいた「擬似予言者」になることも病院全体としてまた一人の医師・精神医療関係者として引き受けることになるのです。恥ずかしくないですか?いかさま科学の支配下におかれること?

さらに、国会審議での塩崎答弁でいわゆる「処遇困難者も排除するものではない」という発言があったことはしっかりとした記憶のある方なら記憶に新しいことでしょう。日精協が本音で作りたいのは「処遇困難者病棟」なのです。おそかれはやかれ、「処遇困難者」も引き受けざるを得ないのはひをみるよりも明らかです。

現在は国際的にみても精神医療バックラッシュの時代と言われています。無論日本社会全体も本格的なバックラッシュの時代に突入しています。このような時代にどう身を処するべきか。一人一人の生き方が問われている時代と言えましょう。

医療観察法廃止への具体的な道筋は残念ながら現時点では立っているとは言いかねますが、だからと言って、いかに「良心的」であれ、疑似科学に基づいた「医療観察法」(なお日精協「政治献金問題」も忘れてもらっては困ります!)などに一切協力する必要は無いものと私は考えます。

なお、厚生労働省は医療費削減に必死です。引き受けてはみたもののあとで「はしごをはずされる」危険性も充分に考慮すべきです。そのうち「手厚い医療」の予算もどんどんと削減されていくことでしょう。

それでも、引き受ける、というのなら、法廃止の道筋をしっかりと立てた上で、引き受ける理由を明確にした上で、そして無論当事者団体の猛烈な糾弾も覚悟の上で、病院潰す覚悟で医療観察法と「心中」してください。

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