医療観察法.NET

医療観察法対象者インタビュー Part3

2008年11月
医療観察法.NET制作委員会

半年近くにも及んだ隔離拘束

Aさん母  私はこの一発が何で防げなかったんだと思って、鬱になるね。普段そんな暴力的な子じゃないから、この子もかなり頭に来たんだね。何の病気だったって人格あるからね。去年起きた事件の日にちは忘れもしない。それからずっと長引いているんですよ。疲れますよ、こっちの方が。本人も嫌がるけど、私も疲れる。

池原  Aさんの場合はそれで、1ヶ月保護室でしたっけ? 裁判自体は医療観察法裁判は何ヶ月ぐらいですか? 

Aさん母  22日間警察に拘留されて、鑑定入院で2ヶ月恵泉会病院にいて、いきなり飛行機に乗せられて。武蔵病院出てきたのはその更に3ヵ月後です。

池原  お母さんは「東京の武蔵病院に送る事になるよ」という話はいつ?

Aさん母  1回も聞いてません。飛行機の中から聞きました。

 

突然の入院命令の挙句、「勝手に帰れ」。

Aさん母  観察保護の人が連れて行ったんじゃないんですか。「いま飛行機に乗るんです。武蔵に送るから行きます」と。飛行機の中からです。裁判をやってるのも知らなかったんです。連絡が来なかったですから。裁判で決定ですぐ次の日に武蔵。「もう飛行機乗ってますから」という、電話を受けた。その時「どういう事、それ?」って。「どういうつもり?」って。「まるで拉致するようなもんでしょっ」て私は怒っちゃった。

Bさん  怒りたいよね。

Aさん母  この子のんきだから、武蔵についたら「ママ、東京タワー見えたさ」なんて、でもその後、3ヶ月の間毎日夜9時半から電話がきて、おびえて電話かけてきていました。

池原  高等裁判所で入院は必要ないという却下の、取り消しの決定が出て、早速、じゃあ出ていくという話に。

Aさん母  間際まで「出ていい」っていう話はきいてません。

池原  出たは良いんだけど、勝手に帰れですよね。

Aさん母  勝手に帰れって。勝ってに連れて行って、一文無しで追い出されたんです。

Bさん  じゃあ、1人で帰った?

池原  あんな小平の片田舎みたいな所から、羽田空港まで帰れというのは、東京を知らない人にはとても難しい。

Aさん母  ちょっとむずかしいですね、道聞いてもね。ボランティアの人にお世話になったんです。 去年は地獄でした。私。

Bさん  私と同じだったんだ。その時知っていればね・・・、助け合えたのに。

Aさん  毎日電話来るでしょ、送ったお小遣い全部電話賃で消えちゃうんだよ。そしてこの子もそこにいたら色々作業させられるらしいんですよ。絵を描いたり、掃除したり、農作業とか、キッチリこなしてハンコもらわないと。この子は早く出たいから、びっちりスケジュールをこなす、ハンコをもらうのに一生懸命なのさ。時々逆らうらしいんだわ。「俺に対してこんな作業をさせて何の意味があるんだ」とかって言い出したり。

 

ぬぐえない「振り回され感」・・・僕の病気には負担だ

Aさん本人  武蔵病院でも違う病名って言われたし、時間たったり、お医者さんとか変わったりしたら、病名も変わってくるし。

池原  いま、Aさんがとても負担に感じているのは、結局、高等裁判所で入院は取り消されて、「勝手に帰れよ」と、それ自体、酷い話なんだけど、こんどC市の地方裁判所に、また改めて、やりなおしみたいなので行ってみたら、今度は通院をしなさいという事になったんです。それから半年ぐらい通院が続いてるわけだけど、結局わざわざ遠くの病院に行かないといけないし、あれやこれや会議だとか、訪問看護だとかがある。
 月に6回ぐらい何かあるでしょ。どんなことがあるのかちょっともう1回教えていただけますか?

Aさん母  まず月に2回訪問看護、恵泉会から2人来るんだわ。でも、これが何の大した意味も無いんだ。「薬飲んでいるか」とかさ、「ピアノ弾いてるか」とかさ、「猫面倒を見ているか」とか。ほとんどの質問って決まっているんだよね、毎回。「幻聴は聞こえないか」とか、そんな程度。それで月2回来るんですよ。

Aさん本人  結局やっぱり、振り回されたという事なんですね。どう振り返っても。それはまあ良いとしても、またこうやって意味のない事を繰り返してるわけです。それを直すという事もできませんね。

池原  それはこれからしていかないといけない。

Aさん母  月に1回、この子のための恵泉会病院に10人位、いろんな部署から集まってきて、2時間ぐらい会議を開くんです。それも何の意味もないんだわ。

池原  そのケア会議にはお母さんは?

Aさん母  私は行かない。この子だけ行く。私は呼ばれてない。

Aさん本人  僕としては今回の凄い5ヶ月間とか、出てからまた医療観察法で。それが病気の負担になってるというのもあります。意味のない事を繰り返して、また負担になって、そしてまた「病院入れるぞ」って言ってるんですから、全く、全部おかしいんです。

 

その後、保護観察所からの脅し・・

池原  「出てこないと病院へ戻すぞ」と。

Aさん母  月に6回もあるから。1ヶ月に1回はその裁判所の保護観察司(社会復帰調整官※編集註)の所に行かなければならない。それも全部こなさいといけない。この子も忘れるでしょ、1回位。忘れたら「あまり忘れたらまた病院に入れるぞ」と脅かすんです。

池原  それはだれが? 社会復帰調整官が?

Aさん母  病院行くの忘れたりしたら「また病院に入れるぞ」と脅かすから、この前、頭に来て電話したんですよ、その人に。「あなたね、こんだけの回数があったら普通の人間だって忘れるよ、忘れたからって、また病院に入れるぞって、あなたにそんなことを決定する権限あるんですか?あの子、そのおかげでかえって具合悪くなってますよ」って。「私は今まで法律だからしょうがないと思っておとなしく黙っていたけれど、あまり司法の力を振りかざすようなものの言い方はやめてくれない」と言ったんです。
 2回忘れたんです。そうしたら、会議で先生たちはこの子の病状が悪化してると言い出したんです。その人に「悪化なんかしてませんよ。もちろん普通の人から見たらおかしいよ、だけれども誰かに迷惑をかけているかい、迷惑をかけないでちゃんと生きているでしょ。それに、私悪いけど医者のいう事を信用していないから、医者のおかしいのなんか一杯いるんだわ、そんな医者を信用できるか馬鹿」って怒鳴ったんですよ。黙ってたわ。

池原  そうすると観察法がらみの事で、月に訪問看護が2回、通院は月に2回〜3回。ケア会議1回。調整官に会いに1回。月7回スケジュールが詰まる。

Aさん母  1ヶ月の内にこれって負担ですよ。この子にとっても不安。遠い所ばかりでしょ。いま夏場だから私が送っていかれないから、自分で自転車でどこでも行くんです、恵泉会病院なんてえらい遠いですよ、10キロぐらいあるんじゃないんですか。

池原  元々、自分で通院された所は近くにあるわけですよね。

Aさん本人  結局なんていうんだろ、意味の無い事ばかりするんです。やっぱりおかしいですよ。またおかしな事を繰り返してるんですよ。だからひっくり返さないといけないんです。

Aさん母  この子は去年病院に入れられたのが恐怖だったから。初めての入院だった。

Aさん本人  どのぐらい勝つ見込みはあるんですか?(人権救済申し立てのこと※編集註)

池原  ちょっとそれは、また今は分からないです。
少し教えて欲しいのは、ケア会議というのはどんな雰囲気ですか。あなた以外はお医者さん?

 

何のための、誰のためのケア会議なのか、僕にはわからない

Aさん本人  10人位いるんです。そして、だいたい、僕の身の回りの管理する人なんです。生活保護の人2人とか。恵泉会の病院の訪問看護の人2人とか、あと、色々・・・、デイケアの人(デイケア通所は拒否して参加していない。※編集註)とか。だいたい、そういうので10人位で。だけど、何だかんだ言ったって、結果的に僕の精神的負担になっている。精神的負担になるだけじゃなくて、僕に対してまた病院に入れるとか、ごちゃごちゃ言って、お医者さんもごちゃごちゃ言って、僕の病気を良くするのがお医者さんの勤めなのに、僕の負担になるような事ばかりやってくる。

池原  要するに29才の人間としたら、自分でどういう生活するかというのは基本的に自分の自由で、他にとやかく言われる必要は無いはずです。

Aさん本人  別に何も大した事をしていないのに、それを盾に、ごちゃごちゃ言ってくるんです。

池原  そういう会議でこういうアドバイスをしてくれたから、そうかこういう風にすると、もっと生活が楽になったり、気持ちが楽になったりするんだとか、そういう感覚を持った事、無いですか?

Aさん本人  無いです。全然、自分のためにはなっていないです。

Aさん母  そんな事をされても、この子の負担にはなるけれども、前向きな事とというのは何一つ無いわけですよ。話し合いだけで。ただ本当に時間の無駄。法律で決まっているから。

Aさん本人  今回早めに決まったんですよ。弁護士じゃなくて、裁判官から何でしたっけ、100分の1の確立で出来たんです。それで急きょ帰ってくる事になったんです

池原   高等裁判所で入院処遇が取り消しになったという事ですね。

 

 

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