医療観察法.NET

医療観察法対象者インタビュー Part4

2008年11月
医療観察法.NET制作委員会

定まらぬ診断・・・また入院させられるかもという不安

Aさん本人  武蔵病院で完全に病名を診断するに到らないで来たわけです。今回また病名も他の所でしっかり診てもらったら変わるという事で。

池原  病名の事ですけど、最初C市で通院されてた時の病名、支障がなければ教えていただければ。

Aさん母  まず最初にお医者さんに行ったのは、今から5年ぐらい前かな。それまでは普通に働いてたんだけど。前からその傾向はちょっと色々あったなと、親としては思ってますけど、我慢して我慢して働いてたんだね。5年ぐらい前、ある日突然お昼に勤めていた会社からこの子が作業服を着たまま帰って家にいるんですわ。顔を見たら、顔中かきむしって血だらけになって泣いているんだわ。それで私は喧嘩してきたのかと思って、「Aちゃんどうしたの?喧嘩してきたの?」って言ったら、「いや違う。町中の人間が俺を狙ってる」って、「俺はこれから東京へ逃げなければならない」って泣いてるんだわ。その時にイッタなって思ったから、すぐ次の日にクリニックに連れていったら、先生が統合失調症だと。「もう働けませんから、診断書を書くから、早く生活保護の手続きをとって、治療してください」という事でした。

Aさん本人  だけどそれが統合失調症かどうかということで、武蔵病院でまた新しい診方でみてもらったら、統合失調症は軽いかもしれないって事とか、あとはまた違う病名が出てきたんです。精神発達障害と、あと1つあったんですけど、カルテを見たら分かるんですけど、武蔵病院の期間の間では、調べられなかったんです。だからまた変わると思うんです。変わっていったら、今回の鑑定入院みたいに、医療観察法とれるような事とか出てくると思うんですけど。結局必要ないんですよ。医療観察法は僕には必要ないってことを僕は今回言いたいんですよ。それで負担になってるんですよ。また入れられたら1年とか何ヶ月も、冗談じゃないんです。また間違った判決を影でごちゃごちゃ言って僕を入れようとしているんですよ。そう言ってきたんですよ。

録音記録の有我  本当の病気が違うのに診断が間違っているから、この医療観察法にさせられてしまってという意味ですか?

Aさん本人  武蔵病院で統合失調症は軽いとか言われた。あと、D市かどこかで診てもらったら、今回裁判所で、決断出した事より、もっと軽い事を言われると思うんですよ。そうやって、その事で5ヶ月間の事をまた新しく言えると思うんですよ。

池原  病名が変わると、また新たに何か病名でもって、自分は病院に入れられるんじゃないかという心配?

Aさん本人  医療観察法がおかしいというのは結局、何で僕を、ここまで振り回していたかという事で、あやふやなんです。

池原  Aさんがおっしゃてる、ずっと今まで医療観察法に振り回されてきた、というのはあなたのおっしゃる通り。そもそも最初に入院決定というのがされて、東京までわざわざ送られてしまった。だけどそれは高等裁判所というところで間違いだよという事でいったん取り消しになったんですよ。C市に一応戻ったんだけど、今度は、入院は間違いだったかもしれないけど、通院はしなければいけないんだという風に言われてしまって、その通院の所で1ヶ月に5回も6回もあれやこれや、やらなければいけない事があって。それを忘れちゃったりしちゃうと、また入院になるぞという風に脅されているわけです。それをこれから処遇終了の申し立てというのをして、自分で好きな病院に行くのは自由なんだけど、医療観察法みたいに、どこそこの病院と決められ、それから必ず決められた事は、5回も6回も出ていかなければならない、というような窮屈なやり方はしないでいいようにしていこうと思ってるわけです。
 あなたのおっしゃってるように、そもそも診断自体が間違っているんじゃないかという所があって、それは確かにさっきの話を伺うと、一番最初に病気の具合が悪くなった時は、ちょっと統合失調みたいな様子もみれなくはないけど、武蔵病院でも、統合失調症よりはむしろ発達障害みたいな、そういう方向のものが強いんじゃないかという風に言われていた。武蔵病院でも実は高等裁判所が入院を取り消さなければ、病院側から、むしろ退院許可申し立てというのをして、これは言葉が難しいんですけど、病院からは処遇を止めろと言う申し立てはできないことになっているんですよ。退院させろという申し立てしかできない事になっていて。ただ裁判所は病院からそういう申し立てが来たら、処遇を止めちゃう事も含めて判断できる事になってるんです。もしかすると、高等裁判所で取り消しにならなければ、私が当時Aさんと話をしていたのは、じゃあ、もうこっちから処遇終了の申し立てをしようということ。そもそも診断が間違ってるんだから、という話をしていた。診断が統合失調ではなくて、発達障害という方が8割9割しめている、あるいは100%そうなんだという事になると医療観察法をやるのは最初から間違っていたという事になるわけです。

Aさん本人  どう考えてもおかしいですよね。そうやって、僕にそこまで病気が酷いってまた言ってくるって事は、どういう具合で診ていたのかという事になりますよね。意味が見えてこないです。「また病院です」ってことは。同じ事を繰り返してる。

池原  そうですよね。診断が間違っているとすると、治療のし方が間違っているという事なわけです。例えばお腹が痛いという人に頭痛薬を出したって効くわけないわけで。そうすると今やっている治療というのはまったく無意味であるか、むしろ害がある事になるわけです。だから逆に言うと、Aさんご本人にしてもお母さんにしても医療観察法で通院させられてもさっぱり良い事が何も無い。何でこんな風に脅しまくられながらあっちこっち引きずり回されるんだろうということ事だけですよね。言ってるのは。

 

一貫性に欠ける処遇と治療

Aさん母  月に6回も7回もこんな強制的にやられたら、5日にいっぺんという事でしょ。苦痛ですわ、これ。病院行くのを1回忘れて、裁判所に行くのを1回忘れた。

池原  それだけで入院させるぞとは。凄いプレッシャーですね。
Bさんの場合は医療観察法が、幸いそこで終わったので、Aさんみたいに通院を強制される事は無くて、元に戻れたわけですよね。どうでしたか、元に戻って?。

Bさん  いいですよ。ちゃんと行ってますし。昔からの先生ですし。

池原  30年来通ってますもんね。

Bさん  先生を信頼している。

池原  でも、結局30年来通ってたお医者さんとの関係というのは医療観察法のおかげで、何ヶ月か中断させられちゃったわけですよね。元々のクリニックと鑑定入院した足立病院の間でいろんな連携みたいなものはとっていただけたかというと、とってないですね。付添人である私の方から情報を持って行ったんです。そういうのは全然積極的にやらないです。鑑定入院の時にそれが問題になるんです。今回は情報を持っていきましたから、治療的には継続できましたけど、一般によく聞く話ではそれが寸断されてしまって、今まで飲んでいた薬が分からなくて、また違うお薬から始めるという話はよく聞きます。お二方にお聞きしたいんですが、鑑定入院中にご家族の面会とかは?

Bさん  それは自由でした。

池原  Aさんは遠距離ですよね、北海道から東京ですから。

Aさん母  私は武蔵は行ってないけど、恵泉会病院には3日か2日おきに行ってました。でも私しか駄目。私の友達が何回行っても絶対会わせてくれない。

Bさん  友達は駄目なんですよね。

池原  ちょっと戻りますけれど、Bさんの場合なんかは、結局医療観察法は、責任能力があったという事で却下というか、無しに。医療観察法使わない事になったんです。その後、結果的に略式起訴というので罰金払って終わりだったでしょ。だから元々医療観察法が間に入らなければ、事件があって、罰金で終わったはずです。Aさんの場合も同様です 。あとは普通に生活すれば良いわけなんだけど、間に医療観察法が入ったおかげで、とんでもなく引っ張り回されたわけです。

Aさん本人  病気だという事で入れたわけですよね。あそこまで振り回したわけですよ。今回は病気はあまり関係ないという事とかごちゃごちゃしてひっくりがえったわけですよね。それでまた病気の事を言ってくる。本当にこっちとしてはその前だって薬を飲んで普通に過ごしていたわけなんですけど。

池原  それはAさんにとっては凄く分かりにくいと思います。多分法律の専門家の人でも、特別にこの事をやってる人でなければ、どうしてそんなにぐるぐる振り回されるんだろうというのはよく分からないかもしれないです。ましてや、対象にされた人からしたら、なぜ、次はあそこへ行け、ここに行けという話になるのかなというのが、しかも何時になったら、どうなったら、終わりにしてくれるのかというのが、見えないですよね。

Aさん本人  今回、なんて言うんだろ、恵泉会病院の医者がやっぱり駄目なんですよ。もうグルだから、最初と同じで、また間違った事を言ってくるし。

池原   C市の状況はよく分からないですけど、それは多分精神科の病院の数も少ないし、精神科のお医者さんといったらみんな顔見知りだし、そういう人が審判やって、受け入れる病院やってて、みんな裏ではつながってるわけです。

Aさん本人  今回、東京行ったら、全然違う判断をされたんですよ。だからやっぱりD市で診て欲しい。また今回そのために、5ヶ月間そうやって入れるぞって脅してくるんです。

 

再び強制入院となる不安と強制通院の精神的圧迫

Bさん  無理やり再入院になったりしたら、また武蔵まで来るんですか?

池原  彼の場合は北海道から武蔵病院に送られちゃって、今は通院ですけど、北海道でもしまた入院だぞっていう風に言われちゃうと、北海道にはこういう関係の病院が無いので、また東京の武蔵に来るか、あるいは岩手の花巻という所にある病院に行くか、あるいはとんでもなく遠い所に行く事もありうる。

Bさん  そう言いましたよね。私もそれが一番心配でして。

池原  東京の武蔵病院なんか行くと、沖縄の人だとか、北海道の人だとか、全国いろんな人がいます。みんな遠くから来るんです。本当に大変ですよね。

Aさん本人  だからそうなる前に早くなくしたいんですよね。その為の近道というのはあるんですか?

池原  手続きとしてやらなければいけないのは、処遇終了の申し立て。あなたから起こすという事なんですよ。その為には付添人という弁護士を選ばなければいけない。それを誰が担当するかを考えなければいけないと思うんです。と言うのは、C市には弁護士の数はそんなに多くないので。この人権救済申し立てをやった私たちが協力するという事も不可能では無いんだけど、ただ東京、京都、広島という弁護士なので、どういう風に協力できるかというのはちょっと今すぐ約束するのは難しいです。でも凄く大事な事だから、ちゃんとしていかなければいけないと思います。まだ標準的に言っても、2年半残ってるわけです、通院処遇というのは。ちょっと考えたら嫌になっちゃうよね。確かに、1ヶ月に6回ペースで年回に78回ですか。3年間240回位、何だかんだ通わなければいけないのというのは凄いよね。

Aさん本人  結局は病名が間違っている事が分かれば、話は早いんですか?

池原  早いです。もし発達障害がパーフェクトだったら、医療観察法という事は無いでしょう。Aさんの場合、大きいポイントがあって、1つは病名、病気自体が、統合失調症ではなくて、むしろ発達障害とか別の、いわゆる病気というのとは違った種類の、障害に近いような、つまり薬で治すとかどうとかいう性質のものとはちょっと違うじゃないんかという事が1つある。もう1つはこの医療観察法というのは、あまり良い事では無いんだけど、他人に危害を加える危険性があるというのが1つの条件になっているんです。これはAさんの場合、高等裁判所がAさんをそういう、他人に危険を及ぼす人じゃないという風に認定していることです。

Aさん本人  あまりにも酷くて・・・。

池原  ピアノを普段を家で弾いてたり、猫を可愛がったりして、今までも別に暴力を振るったなんてことは、全然無い人。事件の時の状況をみても、相手の方が挑発してきて思わず殴っちゃったという状況だから、こういう人に危険性があるとみるのはおかしいんだという風に高等裁判所が判断して、入院決定を取り消したんです。だから本当はそれを前提にすると、もともと医療観察法の前提が全部飛んじゃうんです。要するにそういうリスクというか危険性が無いという判断がでてるわけだから、C市の地方裁判所が差し戻しで戻ってきた時に、何で通院処遇にしたのかというのは本当によく分からないです。

池原  なんか交通事故の示談みたいな話になっちゃって。内々に聞いた話では鑑定をしたお医者さんだとか、審判をしたお医者さんがいるわけですので、この人たちにある程度面子があるわけです。自分たちの判断で入院決定をしているわけだから、それは何にも無かったという話になると単純な判断ミスですよね。だから多少は顔を立てる点では通院ぐらいに、というような。

Aさん母  「息子の事だとおさめておけ」と。そうやって前もって弁護士会に言われました。裁判前に。

池原  地域ケア会議開いてるじゃないですか、だけどAさんは彼自身が出ていって、自分から嫌だとかどうとかって言える会議になっていないんじゃないかな。普通29才の、別に障害が無くたって、周りはこの道何十年以上のおっさんみたいな人とか、役所の人だとか、病院の偉い先生だとか揃っている所にたった1人だけ自分がいるわけでしょ。「こうした方が良いよ」と言われたのに、嫌ですというのは、とても難しいですよね。

Aさん母  この人は黙ってるだけだって。ただ黙っている。

Aさん本人  精神的に圧迫されるような。あっちは理解しているような顔をしていますけど。噛み合わないのはあっちの方針と僕の方針が全然違うんです。

 

 

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