なくそう!差別と拘禁の医療観察法
11/24全国集会の時の対象者インタビュー
2009年2月
医療観察法.NET制作委員会
2008年7月、医療観察法の対象者3名が、日弁連に対して、医療観察法の手続きにおいて人権侵害を受け、また、現に受けているとして、救済申立を行った。
内2名の方にはその直後に当ホームページからインタビューを行い掲載したが、もう1名の方 (Cさん) についても、2008年11月24日、東京都内で開かれた 「なくそう! 差別と拘禁の医療観察法 全国集会」 で本人と家族から体験報告がされた。 以下にその時のインタビューを掲載 。
Cさんは2003年に勤務先の顧客に加療3ヶ月の障害を負わせ、2005年に車に同乗していた人に対して加療1ヶ月の障害を負わせたものである。先の事件では心神耗弱、次の事件では心神喪失として不起訴処分となり、医療観察法に基づき申し立てられた。
この事例では医療観察法の鑑定時には人格障害という診断が妥当だとされながらも、統合失調症の要素も否定しきれず、治療反応性が肯定され、入院処遇が決定された。しかし、その後の入院機関の治療では統合失調症の診断は否定され、人格障害は同法の対象外として、同病院より地方裁判所に退院許可の申し立てを行ったが、地裁は「同病院が最初から人格障害という結論に基づいて対処してきたのではないか」とこれを棄却した。その後の抗告で高等裁判所は地裁差し戻しを命令し、2006年地裁は処遇終了の決定をした。
この事例の問題点について、人権侵害救済申し立てでは
- 対象者に対する入院処遇は誤診に基づく人身の自由の侵害(拘禁373日)であり、それについてなんらの補償がなされていない。同法には補償規定がない。
- 医療観察法には再審規定がないため、入院決定が確定した者について誤診・事実誤認が判明しても、指定入院医療機関側からは退院許可申立てをするほかなく、対象者であっても処遇終了申立て(50条)を行うほかないことになってしまう。
- 医療観察法申立ての前提となる対象行為が行われたのは、2003年及び2005年同法施行日の直前であり、いずれも同法施行日である2005年7月15日以前の行為である。医療観察法附則第2条は法施行前の対象行為についても同法を遡及適用すべき旨を定めているために医療観察法の申立てが可能となったものであるが、自由剥奪を行う不利益処分を法施行前の行為についてまで適用している。
- そもそも精神科治療の適応性のない者を治療目的で強制入院の対象とした点で不合理極まりない取り扱いを行なったものといわなければならない。
等を指摘している。
病気の症状から事件が発生したのに、すぐには治療継続してもらえない
Cさん母 私はこういう席は慣れてませんので上手く言えるかどうか分からないですけど・・・。この人の事件があった時、この人は地方線の駅でちょっと事件を起こしたんですが、私たちがわからない内に留置所にいたんです。次の日に初めて分かったんです。
この人は病気で治療を受けていて、通院して自分で独居で過ごしているんですけど、留置所に一般の犯罪を犯した人と一緒に入れられていたという事にまず驚きました。この人が留置所の中に入っている事に私は耐えられなくて、結局21日間拘留されました。
池原(弁護士) 留置所の中で薬をちゃんと飲む事を、入れてもらえないとかという事もありましたよね。
Cさん母 留置所に入っているから薬が無いですよね。症状から言うと、ちょっとこの人は調子があがっていて、そのために普通に判断ができなくて、1つの事が起こってしまったんです。私たちが考えるには起こる前に薬が足りなかった、だけど留置所という所は病院じゃないですから治療を受けられない、薬がもらえない、そこから始まって、治療を受けさせてくれという事から始まりました。
その時に池原先生を紹介されました。 私たちは本人にはすぐに会えないんですね。身内は会えなくて、弁護士の先生がすぐに本人に会えるものですから、大変助かりました。
それから、 都立の松沢病院という所に薬をもらいにいってもらって、薬はおおまかな所飲めるようになりました。
審判では、家族の責任が大きく問われる
医療観察法というのがよく分からない。私たちもこんなのがあるぐらいしか知らない内に、21日間の拘留がすぎたら、 不起訴なんだけど、医療観察法が適用されるという事で、違う所に入っていました。
それから指定されている病院に行きまして、そこで鑑定を受けたんです。そこから審判というのがあって、それはまったく一般の裁判に似てました。私も保護者になっていますから、呼び出されて行ったんですけど、この人と私は別に住んでいます。この人は同じ町ですけど独立して住んでいて、私は別の所に住んでいるんですが保護者としていきました。
検察側の論告というのがありまして、いかに悪いかという事を言い立てるんです。私はこの人を生んで育てたけど、育てた時には病気じゃなかったわけで、成人してから発病したわけです。私は何か悪い事をしろと言ってきたわけじゃないし、この事件も何か重大な、もの凄く悪い事件とは1つも思えないわけですね。なのに、母親の私に検察官が言った事は、別な所に住んでいるから、薬を飲ませなかったじゃないかと。薬を飲んだか飲まないかという事は別な所に住んでいたら、透視眼じゃないので、見る事はできませんよね。服薬というのは自覚に基づいて自主的に飲むものですし、そうやって飲んでいたんです。それでも調子が高くなったり下がったりという、波はあります。その時に私がいかに悪いかと言われました。あなたはちゃんとこの人に薬を飲ませなかった、そういう事もできなかったじゃないかと。
私は非難された時に、病気の実態や本人の置かれている状況とか、患者の状況も知らないのに、論告するやり方に、無理やり医療観察法というものにもっていってしまうんじゃないか、もっていきたいからそういう事を作り上げているんじゃないかと思いました。これは本当の事と違って、障害者を大事にする法律ではなく、違う方向にもって行くんじゃないかって、疑問がずっとあったんです。今回ここに書かれているように拘禁の医療観察法だという事をこのタイトルで知って、そういう事だったのかという事が初めて読めてきました。
自分の処遇の見通しが知らされない不安
池原 Cさんは何ヶ月ぐらい入ってたんですか。
Cさん 鑑定入院で2ヶ月と2、3週間、それから実質医療観察法の指定に基づいて入院したのは7ヶ月間と2、3週間ぐらいです。
池原 通院がどのぐらい続いていますか?
Cさん 今は2年半ぐらいです。
池原 もうすぐ終わるんですか。
Cさん そうですね。
池原 通院が終わるというのは自分では、いつどういう状況、どうなったら終わるという事は分かるんですか?
Cさん 全くまだ知らされていません。
池原 例えばこういう状態になれたら君は卒業だよとかいう事ではないんですか?
Cさん はい。実は今週の木曜日に東京地方裁判所に行く事になってるんですけど、それも保護監察官に一緒に着いて行っていただくんですけど、そこで審判が下されると思うんですけど。
池原 そうすると自分ではいつになったらこの通院というのが終わりにできるのかとか、どこまでできるようになったら終わりにできるのかという事は知らされてもいないし、決める事もできないという事なんですか?
Cさん そうです。
行き届いた環境のオモテとウラ
池原 入院してた時は中の感じとしてはどうですか?
Cさん 施設自体は広くて綺麗で、全室個室だったんですけど、僕が以前にも他の精神科の病院に入院した事がありまして、個室というのは殆どないに等しいです。そういう面においては、プライバシーも守られて行き届いた環境だったなと思うんですけど。
池原 中であれでしたっけ。認知行動療法とかしてもらったとか、何か病気の事を理解するとか。
Cさん ああ、ありました。
池原 それは効果はありました?
Cさん そうですね、病気について詳しい程知ってたわけじゃなかったので、詳しく知ったという事は自分にとってはプラスであったのかと。
池原 看護師さんがちょっとブラブラしてたという話してましたね。結構沢山いるから。
Cさん 閉鎖病棟だったんですけど、だいたい、朝8時半から9時ごろに職員のミーティングがありまして、それが終わったと同時に、看護師さんが、患者さんがタバコを吸う所にみんな来てタバコを吸うんです。勤務中にタバコを吸うというのは、休憩時間内に行けばいいと思うんですけど、そういう所はちょっと問題だなと思いました。
池原 どうもありがとうございました。本当に遠くから来ていただいてなかなかこういう所にでてお話をいただくのはとても大変な事だと思うので本当にありがとうございました。